無事に中忍になれたから、やっといつものようなのんびりライフに戻れるよ。
と思っていたら、またミナトが「血筋による差別をなくす」とか言ってはりきり出して、各一族のトップを募り始めたよ。僕も千手一族の代表として母さんと一緒に呼び出されたよ。
主な議題は木の葉警務部隊についてなんだってさ。簡単に言えば里の警察だね。
それは、今まではうちは一族の人ばかりで固められていたけど、そういう偏りはよくない。だから、これからはいろいろと交ぜることにしたらしいよ。有名な一族からの参加は強制するんだってさ。特に有名な千手と日向からは人物も名指しで。
「木の葉最強を自称する日向ヒアシさんと、千手一族を担う身で暇を持て余している千手ヒノキくん。この2人の参加は強制です」
「ええっ」
「なにっ! 私に日向の家を空けろと言うのかっ!」
「特別扱いは許しません。というより、日向家含めてみんなを守るのが特務部隊の役目です」
「くっ」
ヒアシさんが怒るのも無理はない。
差別を無くしたいらしいけど、これはむしろ、僕とヒアシさんだけを特別扱いしている気がするよ。
何か狙いがあるのかな。
「というか、僕はまだ中忍になったばかりなんだけど」
ちょっと理由を教えてもらいたいな。
だから、『教えて』って感じでぽけっと首をかしげてみる。
「強制です」
にっこりと笑顔で返された。
なんか「聞くな」って言っているみたい。
ミナトってこんなに頑固だったっけ?
いや、悪くは無いけどさ。だってこの仕事、犯罪が起こらない限りはぷらぷらしているだけでいいから。暇な時は木分身や霊化の術で抜け出せばいいしね。
「木の葉がより団結するためには、ここの改革が一番重要なんです。みんなの里はみんなで守るべきなんです」
と、ミナトは急に真剣な顔になって言う。
というか、肝心のうちはの意見は?
気になって目だけで見回してみる。
なんか、見覚えのあるおっさんが腕組みしている。その脇にやはり見覚えのある子がいる。僕と一緒に中忍になった子だ。
が、おっさんは黙っているだけだ。話そうとしない。
「ともかく、最低3年は警務部隊で働いてもらいます。その後のことはそれからです」
それで会議は打ち切られた。
よく分からないけど、みんな納得していた。というか、ほとんどがミナトと仲のいい人だからね。『あいつのことだ。何か考えがあるんだろう』みたいな感じで黙って従うようだよ。ふつう独裁者だなんだと文句が出るところだと思うけど、全くそういうことは無かったね。
帰り道。
「母さん。なんで急に僕とヒアシさんだけ名指しされたの? ミナトの嫌っている血筋による差別に該当すると思うんだけど」
と、思ったままに聞いてみる。
「たぶん、うちはが千手と日向を気にしているからだろうな」
「うちはが?」
よく分からない。なんでその名前が出てきたのか。
「やつらはプライドが高いからな。千手や日向と同じ扱いを受けたがっているのさ。ミナトはその不満を静めようと必死なんだ。それで千手一族で一番期待のかかっているお前と、日向一族のトップであるヒアシに声をかけたのだろう。二人とも基本は暇だしな。任務を率先して受けるわけでもないから」
なるほど。はた迷惑なうちは一族が原因ってことか。
まあ別にいいけどね。楽そうな仕事だし。
警務部隊での活動初日。
「はあー、だっるーっい」
眠気に抗いながら歩を進める。
6時集合なんて早すぎるよ。もう任務中でも寝まくってやる。
指定された場所はうちは居住区の真ん中辺り。そんなところ初めていくよ。うちは一族ばかりで居心地もよくないし、遊ぶところもさしてないからね。
場所に着くと、すでに大勢集まっていた。
そこそこ強そうな人ばかりだ。本当に強い人はあまりいないけどね。
でも、間違いなくこの里でもかなり上位な人もいる。
木の葉最強を自称している日向ヒアシさん。木の葉警務部隊隊長のうちはフガクさん。瞬身のシスイと呼ばれているうちはシスイさん。なんかがそうだね。
他は僕よりもいくらか弱そう。やったね。僕は最低でも4番目だ。
6時の少し前に点呼が始まり、6時に班の発表が行われた。
「班は実力と実績を考慮して、俺とミナトが話し合って決めた。ひとまずはそれに従ってくれ。どの班にも最低は一人経験者を混ぜているから、分からないことがあったら彼らに尋ねればいい。では名前を呼ぶ。まず俺の班が、月光ハヤテ……」
どんどん人の名前を呼んでいく。
なんだかんだうちはが多い。割合は3分の1くらい。
「……千手ヒノキ。以上はうちはミコト班だ」
おお、僕の名だ。班長は女の人か。これは幸先がいいな。
というかあの人、中忍試験の時に見た気がするぞ。たぶんイタチくんの母親だ。イケメンの母なだけあって、顔が整っているんだね。
「全部で42班。14班が8時間ずつで交代だ。有事には全班出動体制にもなる。以上だ。あとは班長の指示に従ってくれ」
みなが「はい」としゃきしゃきと返事する中で、僕は「へーい」と小さく返事をする。
眠いのだ。まあ、班長が美人だったから少しはやる気も出てきたけどね。