いたずら好きな木遁使い   作:GGアライグマ

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青年期
中忍試験


 それからもちょっとしたいざこざはあったけど、みんな元気なままで日々が過ぎていったよ。僕は15歳になったよ。

 この間にあった一番大きな事件は、大蛇丸が里を抜けたことだと思うよ。なんか人体実験をしていたのがバレたんだって。まあ前からやばいことをやっていたし、そこまで驚くほどのことでもないかもしれないけどね。

 二番目に大きな事件は、日向ヒアシさんの長女が攫われて、ややこしいことがあってヒアシさんの弟のヒザシさんが死んでしまったことかな。これは悲しい事件だった。

 三番目に大きな事件は、事件って言い方も変だけど、ミナトとクシナさんの間に子供が生まれたことかな。名前はナルト。

 他にはさして驚くようなことはなかったよ。スズネがしゃべれるようなった時は感動ものだったけどね。

 

 だけど、今日からはそれなりに刺激的な毎日が続くと思うんだ。中忍試験が始まるから。

 今までは全部無視していたけど、今回は受けることにしたよ。なんか火影がミナトに変わってから血筋云々で優遇したり不遇にしたりするのをやめちゃったから、下忍のままじゃモテなくなっちゃったんだ。僕は血筋だけじゃなくて実力も文句なしなのにね。

 しょうがないから、かわいい少女たちに僕の実力を見せつけてやることにしたよ。最近戦ってないからなまってるかもしれないけどね。でもまあ、3年前のハヤテ程度でも中忍になれたみたいだしね。僕なら楽勝だと思うよ。

 

「というわけで、今回はここの班に入れてね。千手ヒノキだよ。木遁とか医療忍術とか使えるよ。よろしく」

「うちはイタチです。火遁系が得意です。よろしくお願いします」

「俺は必要ないよな」

「うん。イルカのことはよく知ってるから必要ないね」

 

 中忍試験は三人一組じゃないと受けられないんだ。

 だから、僕みたいなあぶれた人は適当な班に入れてもらうんだ。

 

「それじゃあ行こうか。一次試験は筆記みたいだね」

「そうですね」

 

 僕らはとある建物に入り、階段を上ってゆく。

 

「って、おいお前ら。試験会場はそっちじゃ」

 

 あれ? イルカは気付かなかったのかな。

 

「解。ほら、幻術は解けたでしょ? ここは3階。試験会場は4階だよ」

「ああ。なるほど」

 

 分かったのはよかったけど、ちょっと心配。

 これだと、僕たちのサポートなしで合格するのは無理かなあ。

 

 

 会場に着くと、僕と同い年くらいのメスどもが10歳のイタチくんに群がり始めたよ。

 

「きゃー、イタチくんも受けるの?」

「かわいい。会いたかったよ、イタチきゅん」

 

 うん。気分のいいものじゃないね。

 無視していよっと。

 

「なあイルカ。イタチくんってあんなにモテてたの?」

「うん、まあな。俺も学年が違うから詳しくは知らないが、学年が違うのに話題になるほどにはモテていたな」

「ふーん」

 

 なんてたわいのない会話もしてみる。

 

「くおぉらああああ!!!! てめえら! ここは遊び場じゃねえんだぞ!」

 

 と、部屋の前側のドアから怒鳴り声が。

 びっくりした。なんだあの人。

 ああそうか。試験官か。きゃっきゃ言っていた若者にカツを入れたんだね。だけど、もう少し静かにしてくれないと心臓に悪いよ。

 

 でも、それで静まり返ったから、さっさと試験の説明に移ることができたみたいだよ。

 全部で10問らしいよ。1問につき1点で、班で10点失ったら不合格なんだってさ。解くのは個人だけど、成績は班で出すみたいだね。

 でも、カンニングは1回バレるにつきマイナス5点なんだってさ。意外と寛容なんだね。

 

「試験開始!」

 

 始まったよ。問題用紙を裏返すよ。

 ……うん。見るに、そこそこ難しいね。アカデミーを卒業して、3年くらい勉強すれば満点が取れるくらいかな。細かい年数は分からないけど。

 でも、僕たちはみんな3年以上経ってるし、楽勝だよね。とっとと終わらして僕は寝よっと。

 

 ガツン、と頭を殴られて起こされた。

 

「試験終了だ。解答用紙をわたせ」

 

 ああ、もう終わったんだ。でもわざわざ殴って起こさなくてもいいのに。

 ちょっと不満に思いながら、僕をぶった人を見てみる。

 えーっと、名前なんだっけ、思い出せない。だけど、アカデミーでよく僕をぶっていた人だったよ。なつかしいね。

 

 試験の採点があるから僕たちは休憩室で待たされることになったよ。

 暇だから適当にしゃべることにするよ。

 

「はーーー、気持ちよく寝れた。1次試験ってこともあって簡単だったね」

「えっ。お前、できたのか?」

「えっ。うん、まあ。1つだけちょっと迷っちゃったけどね。でも、30分くらいで全問解けたよ」

「そうか。……イタチは?」

「ギリギリでしたが、一応は全問」

「なるほどな」

 

 と、イルカがどこか遠い目になっている。

 あまりできがよくなかったのだろう。

 

「まあこれはチーム戦だからね。イルカの点が悪くとも、1問だけできていればそれでいいんだよ」

「そうだな」

 

 未だどこか浮かれない顔だ。

 まあ僕はともかく、5つも下のイタチくんに負けたとなるとショックだろうね。ここは一人にしておいてあげようかな。

 

「では、合格した班の番号を発表する」

 

 やっと発表の時間になったよ。

 僕たちの班の番号は34だよ。

 

「……33、34、55、61……」

 

 34が呼ばれたよ。よかったね。

 笑顔でイルカに振り向いてみる。ホッと一息ついていたよ。

 

 

「では、合格した班は私に付いてくるように。二次試験会場に着き次第、試験内容の説明を始める」

 

 ひょこひょこと僕たちは付いて行くよ。

 次はどんな試験なのかな。というか、さっきので大分落ちたんだね。100班は超えていたと思うけど、今は20と少ししかない。意外と難しかったのかな。

 

 試験会場は死の森と呼ばれる場所だったよ。

 なんか前に生霊になって覗いた時もここでやっていた気がするし、パターン化しているのかもね。

 

「二次試験はサバイバルだ。今からお前たちにこの天の書と地の書のうちのいずれかを配る。班ごとにバラバラの地点から出発する。5日以内に両方の書を持って中央にある塔に来い。以上」

 

 と言って見せるのは、側面に大きく天、もしくは地と書かれた巻き物。

 うん。めちゃくちゃ分かりやすいよ。別の巻き物を別の班から奪って中央まで行けばいいんだね。

 あと『危険だから命の保証はできません』とかなんとかにサインをさせられたけど、これはやりすぎだと思うよ。まだまだ先の長い子供達だし、監視を付けて命を救ってあげるくらいしてもいいんじゃないかな。あとでミナトに言っておこう。

 

 出発地点に移動中。

 

「俺達は天の書だから、地の書を探せばいいんだな」

「開始早々に僕の霊化の術で敵を探すよ。それで地の書を見つけたら帰ってくる。ああでも、強そうなやつとは戦わない方がいいから、その辺の判断もしてからね」

「お前が勝てねえなら誰も勝てねえよ」

「でも、過信はしないように注意するよ」

 

 移動後、しばらく待つ。

 

「では、試験開始!」

 

 と、始まったので早速生霊になって飛び回ってみる。

 800メートルほど飛んでみて、早速発見。しかも地の書だ。持っている連中も弱そう。

 

「見つけたよ。それじゃあ行こうか。付いてきて」

「おう」

「はい」

 

 移動スピードはそこそこに抑えているけど、イルカは息が切れてだいぶ取り残されているよ。

 イタチくんもしんどそうではある。

 これから戦闘になるし、一応彼女を用意しておくことにしよう。

 

「口寄せの術」

 

 ドロン、と手のひらサイズのナメクジが出てくる。

 

「ヒノキくん。何の用でしょうか」

「カツユ、今は中忍試験中で、もうすぐ戦闘になりそうなんだ。だから、あの子に付いていてあげて」

「あの子ですか。分かりました」

「ついでにちょっと回復もしてあげて」

「はい、分かりました」

 

 その後、ちょっと驚いているイルカに事情を説明して、カツユをイルカの肩に乗せてやった。

 だけど必要なかったかもしれない。

 今回の相手はちょっとボコスカ殴るだけで事足りたから、術も何も必要なかったよ。

 女の子だけは殴りたくないから、木で縛り上げたんだけどね。おかされないように貞操帯もどきも作ってあげたよ。

 

「やっぱり二次試験じゃまだそこまで大変じゃないね。次ぐらいからきつくなるのかな」

 

 と、語りかけてみたけど返事は無かったよ。

 自慢っぽかったのかもしれないね。ちょっと反省かな。

 

 

 なんか肩すかしだよ。全然難しくないんだもん。

 なんか、ふつうに塔の真ん中まで来れちゃったよ。誰も襲って来なかったし。

 それで、ここで巻き物を開けばいいみたいだから開いてみるよ。

 

「うわっ」

 

 ひらいた途端、ドロンと土煙が立ち上る。

 口寄せされた何かが見える。

 

「あひィー。って、ヒノくんたちか。早かったですね」

 

 シズネ姉さんだった。そう言えば、昨日あたりから妙にそわそわしていた気もする。

 それと、戦後に口調も雰囲気もちょっと変わって、それはおもしろいけど、ちょっと恥ずかしい。

 

「この天と地の言葉の意味はですね……」

 

 姉さんは忍びのなんたるかを説明するためにここに来たらしいよ。いいことを言っていた気もするけど、テンパっていたのがおもしろかったからさして聞いていなかったよ。

 

 塔の中で暇な時間を過ごすこと五日。やっと試験が終わってくれたよ。

 これからやっと最終試験だ。とはならず、1か月後に大名やらなんやらを呼んで始めるらしいよ。見世物のような形で1対1の試合をするんだって。トーナメント形式で。って、知ってたけどね。

 ちなみにだけど、一回戦の相手は誰とも知れない雨隠れの忍びになったよ。適当に相手してやろうかな。

 それに勝つとイルカと草隠れの何がしの勝った方。それに勝つと決勝戦だよ。たぶん相手はイタチくんになるね。彼、相当強いみたいだから。

 まあ、勝てなくても強さを見せつけることができれば中忍になれるようだし、ほどほどにがんばろうと思うよ。

 

 そして一か月後。

 家族も見守る中で僕の試合が始まる。

 

「どうせ勝つだろうががんばれよー」

「油断大敵ですよ」

「殺すなよ」

「兄ちゃんがんばってーーー」

 

 なんて声が聞こえてくる。

 いいカッコウを見せたいし、僕も一応本気モードになっておく。

 

 目をつぶり、精神を研ぎ澄ませ、カッとチャクラを練ってみる。

 それから大きく息を吸い、吐き、目を開き、相手をにらみつける。

 

 ……なんだかものすごく萎縮している。僕を恐れているようだ。

 

「では、試合開始!」

 

 瞬間、相手目がけて駆ける。ただ真っ直ぐに。

 

「わわわっ」

 

 驚いた相手は勝手にバランスを崩す。

 隙だらけなので、そのままちょこんと体当たりしてみる。

 

「ぶへっ」

 

 吹き飛んでいく。

 壁にぶつかり、どさりと落ちる。

 

「勝者、千手ヒノキ」

 

 なんだこれ。茶番みたいだ。

 だけど突然、大声援が飛んでくる。

 「きゃー、きゃー」とか「すげえ」とか「あれが千手の天才児か」とかなんとか。

 びっくりした。あんなのでいいのか。まあ僕は昔から同年代じゃ敵無しだったしね。こんなものなのかな。

 

「兄ちゃんすっごーーーっい」

 

 と、帰ると妹のスズネが褒めてくれた。

 

「はは。ありがとう」

 

 なんていいながら抱っこする。やわらかい。きゃっきゃなんて言っているのもかわいらしい。

 

「まあ当然だな。お前は6つの時にはすでに中忍レベルだった。今では上忍でも強い方だろう」

「そうかなあ。最近は本気を出してないからよく分かんないけど」

「平和ですからね」

 

 みんなで「ははは」なんて笑う。

 ここだけは暖かい雰囲気だ。試合会場の熱気とは全然違う。

 

「お前は余裕だな」

「さすがですね」

 

 と、イルカとイタチくんもやってきた。

 

「うん。でも、気を抜かないようには注意だね」

「はは、俺と戦う時は手加減してくれよ」

「まあ危ないことはしないよ」

 

 グダグダ話していると、イルカの試合の時間になった。

 

「行ってら」

「おう」

 

 気合十分だけど、どうなのかな。

 なんか右手を覆っている包帯が心配だけど。運悪くケガしちゃったのかな。

 

 試合ではイルカが相手を圧倒した。

 イルカは一か月前とはまるで別人になっていた。ただ、右手を着いた時にやはり痛んだようで、少し動きの鈍ったところにケリを入れられた。

 それ以外は問題なかった。特に影分身の術が効果的に決まっていた。

 

「勝者、うみのイルカ」

 

 名乗られると共に、場内が少しだけざわめく。

 僕の時よりはずっと静かだ。ミナトには残念なことに、血筋というものはまだまだ重要視されているみたいだね。

 

 イルカの下には両親がうれしそうに駆け寄っていたよ。

 ケガは僕の母さんが治したよ。次の敵の親だからってイルカはちょっと遠慮していたけど、母さんが「ヒノキを負かせてくれるならそれはそれで勉強になるからいい」とか言うと、イルカも素直に従ったよ。というか、母さんが接近して胸が近づいたことに興奮していた気がするよ。まあその気持ちは分かるけどね。

 

「勝者、うちはイタチ」

 

 っと、イルカの様子を見てる間にもイタチくんの試合は終わっていたよ。

 やっぱり彼はかなり優秀なようだね。


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