生物兵器の夢   作:ムラムリ

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特に何があった訳でもないけれど、やっぱりハンターって格好いいよねっていうので盛ってきたのと、構想が出てきたので1年半振りくらいの番外編。



No.30 - 1

 いつも通りのトラックの中。いつも通りの仲間達。

 腹を見せて緊張の素振りも見せず、そして今日も隠れて人を犯す事を夢見ているのか、寝ながら陰茎を出してぴくぴくさせているNo.13。

 それを変わらず呆れた目で眺めているNo.7。

 今日も天井をぼうっと眺めて、何を考えているのか良く分からないNo.6。

 足の調子を確かめているNo.10と隠し持っていた何かを口の中で動かしているNo.21。

 No.97と共に穏やかな寝息を立てながら、それでいてどこか強い敵に会える事を願っているような顔をしているNo.1。

 その近くで唯一、今日も生き延びられるかを不安に感じる様子で、両手を弄りながら思考をぐるぐると回しているNo.27。

 ……最初から生き続けているのも、もう四匹に一匹以下になって暫く。

 今日は市街戦。敵対組織の武器庫がある街を襲う。今日は中々に激しい戦闘になる。

 沢山の人間が銃弾が飛び交わせる中、それを殲滅していく。新参は今日も沢山死ぬだろう。中堅もきっと幾つか死ぬ。自分達だって気を抜いた瞬間どうなるか分からない。

 まあ、何とかなる。今までだってそうだった。

 トラックが一度大きく揺れて、その少し後、同じ荷台に居る人間の無線機が鳴る。それに一つ二つ受け答えしてから、その人間が外に漏れないように言った。

「そろそろ出番だ、起きろ」

 No.27がNo.1とNo.97を起こせば、待ちくたびれたように体をぐるぐると回す。No.21はずっと噛んでいた何かをごくりと飲み干し、No.10は立ち上がって足をぶらぶらとする。No.6は変わらず天井を眺めたままだけれど、体を動かす準備はしていた。そして、No.7がNo.13の陰茎を軽く踏んだ。

「ギャッ」

 No.13が小さく悲鳴を上げた。

 まあ、今日も何とかなる。いつも通り自分は指の一本一本を折って、握り締めて、開いてを何度か繰り返す。爪の一本一本を噛んで舐め、変わらず鋭い事を確認する。前を向く。

 トラックが止まった。

 

*

 

 トラックが止まってから人間が無線で会話した後、古参の自分達には爆弾を一つ手渡された。また、いつものようにNo.27には特別にもう一つ。小指の爪にピンを引っ掛けておく。

「そろそろだ……10, 9, 8」

 カウントダウンと共に、No.6がやっと集中するような顔を見せた。No.13がやっと陰茎を引っ込める。

「7, 6, 5」

 No.10は軽く跳躍して、No.21は腹の調子を確かめるように腹を摩る。

「4, 3」

 No.1とNo.97が爪をせわしなく動かしながら、舌なめずりをする。

「2, 1」

 No.7とNo.27は不安そうな顔を隠せていなかった。

 ……何とかなる。

「行けっ! ありったけの首を落としてこいっ!」

 バンッ!

 勢い良くトラックの扉が開かれた。突き刺してくる眩い太陽。目を細めて前へと飛び出す。

 目の前には、口をぽっかりと開けて呆然としているばかりの人間が。

「……は?」

 No.1が低い姿勢のまま足を切り裂き、前へと倒れていくその首にNo.97が爪を置いて串刺しにした。

「うわわっ、うわっ、敵襲、敵襲だァガッ……」

 遅れて逃げようとした人間達も逃さず、No.10を筆頭に追いつき、押し倒す事もなく背中から胸に爪を突き刺して仕留める。

 同時に組織の人間が援護する銃声も鳴り響く。

 殲滅作戦が幕を開けた。

 

 至る所に配置されたトラック、同時に悲鳴が上がる。散らばっていく仲間達。新参達の殆どが好き勝手暴れられる事に喜びながらバラバラに散っていくのに対して、最も古参の自分達がそれぞれ中堅を引き連れる。

 目の前の高い建物、ガラス越しに見える一階の中、奥へと逃げていく人間達。

 準備される前に出来るだけ数を減らそうと思うも、即座に銃を持ってきた人間が奥から見えて物陰に跳び隠れる。遅れた中堅の一匹が足に銃弾を喰らって転び、それでも這って逃げようとするところを蜂の巣にされた。

 だが、銃撃が終わった直後、No.27が物陰から爆弾を投げた。爆弾はガラスを砕いて中の人間が叫んだと同時に爆発し、更に組織の人間が援護にと二階、三階に銃撃をしながら叫ぶ。

「今の内に中へ入り込め!」

 壁を這い登って行く皆。No.10が屋上へと真っ先に辿り着き、爆弾を投げてから躍り出た。自分も別の階に対して爆弾を投げ入れてから、爆発の後に躍り出た。

 パラララッ!

「ギッ!」

 爆煙の中、響いた銃声。身を伏せるよりも先に、腕に一発当たっていた。

「ア、ヒュッ、カッ……?!」

 自分が遅れて身を伏せた時、同じく入ってきていた中堅の胸から血がつー、と流れているのが見えた。

 ふら、ふらと二、三歩足を動かした後、そのままうつ伏せに倒れた。

「……」

 こう言うのを人は運、と言うらしい。横凪ぎに撃たれた銃弾の数々に対し、自分は腕の鱗に当たって軽く削れた位だった。

 隣の中堅は、それが急所に当たった。

 パララララッ、パラララッ!

 軽い銃声。腹と顔にさえ当たらなければどうという事はない程度の銃弾。音の鳴る方向に、近くの瓦礫を投げつければ。

「ぐああっ!?」

 それと同時に狂ったようにばら撒かれた銃弾が一通り過ぎ去ってから、距離を詰めて殺した。

 他の部屋も程なくして銃声は聞こえなくなった。

 

「……ヒューッ、ヒューッ」

 中堅を仰向けにすると、手で胸を抑えているものの、気管に穴を開けられているのか血がごぽぽと溢れ出していた。

 涙を流し、目は死にたくないと訴えていた。

 ……何度、見送ってきた事だろう。何度、似たような事があっただろう。

 首に爪を当てて、楽にするか? と問いかけてみれば僅かながらに目が動いてそれを拒んでくる。

 流れる血が次第に少なくなっていく。鼓動が弱くなっていく。

 そうして体が完全に動かなくなるまで、隣に居た。

 その目は死んでも尚、死にたくないと訴えてきていた。

 …………いつしか、自分もこうして死ぬのだろう。

 運が良いだけ。それ以外何も持ち合わせていない。銃を持った人間を正面から無傷で殺すような戦闘力も、誰よりも速く駆けて錯乱出来るような足も、どれだけ動こうとも疲れを知らない体力も、それらが無くとも補える程にある警戒心も、戦略を考えるような頭も。

 立ち上がって外に出れば、もう既に他の皆は他の場所を攻めに行っていた。

 ……行かなきゃな。

 役立たず扱いされれば、飯も扱いも粗末になる。それでも最悪死ぬ、殺される。自分程度の力ではそうでなくともいつか死ぬだろうと思いながらも、自ら死のうと思うまで絶望している訳でもない。ただ、生きていられればそれはそれで十分楽しい事はある。それを手放すつもりはない。

 今となっては死体ばかりが転がっている道を走る。取り逃がしは居ないようで、居たとしてもきっと大した武器は持っていない。遠くから聞こえる銃声は激しく、時折爆音も聞こえてくる。隠していると言われている武器やらはそっちの方にあるのだろう。

 そろそろ物陰に隠れて進むか。

 強い弾丸ならきっとここまで届いてくる。

 プツッ。

 …………え?

 熱い。胸。手を当てる。血。沢山。止まらない。膝をついていた。

 壁、寄りかかる。

「ヒュッ、ヒュッ……」

 息が、出来ない。

 体がこれは駄目だと理解していた。

 世界が一気に静かになったよう。弾丸の風切り音が何度か近くを通り過ぎていく音が聞こえてくる。

 遠くからの銃声は更に激しくなっていた。

 最後の抵抗なのだろう、形振り構わずに銃を乱射しまくっている。それに当たった。

 …………死ぬ、のか。今日、だった、のか。

 仕方ない、と思っている自分が居た。それ以上に、こんな誰にも最期を看取られずに死ぬのは嫌だと思っている自分が居た。

 胸を出来る限り抑えた。近くにあった小石を捩じ込んだ。

「ィギィッ……」

 少しは保つだろうか。誰か、ここに来るまで。出来れば、人間じゃなくて同じハンターが良い。

 …………ああ。

 変わらない空。乾いた空気。血の臭い。べったりと手につく自分の血。

 やけに冷静に頭が動いている。

 ……あの日も、こんな空気だった。

 とてもはっきり、覚えている。思い出せる。




要するに1話でNo.27に介錯された古参。

続くんじゃよ。多分もう2~3話。

ハンターメインだと捻り出そうと思えばもう少しは書けたりすると思うんだけど、別に生物兵器の夢と全く別ベクトルのものではないだろうし、これからも思いついたりしたらこっちに投げるんじゃないんですかね。

ハンターの押し倒して殺すフェイタリティ好きなんだけど、新しいバイオで出てくんねえかなー。ベロニカリメイクされたら出ないかなー、というかそろそろ新作発表ないかなー。でもリメイクじゃない方だともう既存のTウィルスのクリーチャーとかきっと出ないよなあ。
ハンターの押し倒すフェイタリティも何か二体以上に囲まれていた場合ディフェンスアイテムも問答無用で殺されるようなのにしてくんねえかなー。RE2でそれっぽいのあったしさー。
とかとか。

フィギュア作りという新しい趣味に手を出してるんだけど、4~5体目くらいで作りたいって思ってる。

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