生物兵器の夢   作:ムラムリ

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なんとなーく、今更ながらに、リクエストでNo.27が最後に首刈りをするシーンをモチーフにハンターαを描いてもらったのでその宣伝の為の番外編の更新になります。
https://www.pixiv.net/artworks/100798812
pixivに投稿されているハンターαの絵、いや真面目に、もしかしたら公式も含めて全てのハンターαの絵より格好良くないこれ!?
また何か書いて貰おうかな〜〜〜〜。うーん、No.1がスーパータイラントの首を掻っ切ったシーンなんて良さげじゃないかな?

あ、番外編の内容は組織の崩壊と共に逃亡に成功した二匹の内の一匹の話です。


No.128

 世の中は分からない事だらけだ。

 

 No.27を含む最小ナンバー達が連れられて、誰も帰って来なかった後。

 人間達の会話に、様子に耳を澄ませていれば、死んだのではなく、逃亡したという事が薄々と分かってきた。

 でも、この首輪をどうやって外したのか。ファルファレルロになっていた仲間には、腹に埋め込まれている爆弾をどうやって外したのか。

 何も分からない。

 けれど、どうやってか僕達には外せるような仕組みではあったらしい。

 近々、首輪を新しいのに交換するという話が聞こえてきたから。

 だから、きっと、僕達は最小ナンバー達が逃げる為に使った手段はもう使えないのだろう。

 それまでに新しいミッションも僕達には与えられないようだった。

 とてもひどい。最小ナンバー達は自由を手に入れた。それと引き換えに僕達はもう、ここから出る事は叶わない。

 僕達は、ずっと檻の中で閉じ込められて、外に出る時はミッションをこなさなければいけない。

 そんな生活が死ぬまで続く。

 せめて、ミッションが次々と来ればよかったのに。

 こうして檻の中でじっとしているしかないような時間が多いと、変な考えばかりが頭に浮かんでくる。

 僕達はどこから来たのか。どこへと向かうのか。僕達はどうやって生まれたのか。僕達は死んだ先に何があるのか。

 でも、やっぱり、分からない事だらけだ。

 分からない事だらけ過ぎて、何も進まない。

 どんづまり。

 生きる事は、つまらない。

 ただその思いだけが、段々強くなっていく日々。

 それは……いきなり壊れた。

 

*

 

 唐突に外が騒がしくなった。

 どたばたとしていて、檻の中の皆が少しずつ落ち着かなくなってくる。

 飯時にしか開かない扉がバン! と開けられた。

「緊急だ! 全員プロテクターを着て外に出ろ!」

 何が起きたのか分からないけれど、すぐにそれに従う。

 新参者達にはまだプロテクターは与えられておらず、いつものように檻を揺さぶっていた。

 また、人間を襲っても何もメリットはないと理解している僕達の檻が開けられていく。

 そして、一人が何か僕達に小さく耳打ちをしていた。

 プロテクターを着込んだ後、僕の目の前にもその男が来て、僕に耳打ちをした。

「ここはもう駄目だ。爆弾はこっちで解除する。解除したら伝える。だからとにかく遠くへ逃げろ」

 ……え? ちょっと?

 言われた事に驚きを隠せない。でも、けれど、何が起きようとしているのかだけは分かり始めた。

 ここが、攻められている。

 そしてそれは、僕達が総動員しても敵わない物量。

 新参達の檻は開けられず、しかし重要な鍵すらも僕達に預けられた。

 それを使って新参達も解放された頃、激しい銃声が外から聞こえてきた。

 敵の数、きっと沢山。

 敵の兵力、きっとここを潰せるくらい。

 でも、自由になれるチャンスは、これが最初で最後。僕達は、走り出した。

 

 何が起きたのか分からない。自由になれるチャンスが来たと分かっても、正直なところ、喜ぶ前に頭が追いついていない。

No.27ならこんな今でも冷静に判断を下せるんだろうか。

 でも、そんな事とは関係なしに、敵は目の前からやってきていた。

「あいつらアーマーなんて着込んでやがる、くそっ、止まらねえっ、退避、退避だっ、盾をくれっ! 今すぐっ、ひっ、くっ、来るなっ、うわああああああ!!」

 逃げられるにせよ、数を減らしておくに越した事はない。

 意外と倒せるんじゃないか? と思った瞬間、爆弾が飛んできた。

 その形状。多分、殺傷力が目的じゃない。目を閉じて、隅に寄った。

 パァンッ!!

 激しい音と、目を閉じても分かる強い閃光。反応しきれなかった一部が怯み、そして目の前に出てきた敵が、ごつい銃を向けて。

 ズドンッ!!!!

 撃った敵ものけぞる程の威力、それはまとめて数匹の僕達の胴体を真っ二つにしていた。

「グ、グアアアアッ!!」

 殺さなきゃ、殺される!

 二発目が来る前に、追い迫る。透明な盾を持った連中が前に出てリロードの時間を稼がれる。盾の隙間から銃口が覗いてくる。銃口を誰かが掴んで持ち上げた。耳が壊れそうな銃声がすぐ近くで鳴った。銃口を掴んでいた仲間の爪が砕け、手がひしゃげて、かん高い、長い悲鳴が響き渡る。

 新しく爆弾が後ろへと投げられていく。足元へもついでと言うように転がされた。

 この形……今度こそ爆発するやつだ。すぐ近く、流石にこのプロテクターでも受けきれない!

 でも、前からも後ろからも押されて、逃げる場所が、ない。なら、なら、もう、やれる事は一つしかなかった。

 頼むから、お願いだから、まだ爆発しないで!

 掴んで、返した。腕を引っ込めた瞬間、盾越しに表情のなくなった人間の顔が見えた。

 バァンッ!!

 直後、それは思い切り砕けて赤色に染まった。

 耳がキィンと鳴り響いている。盾役が崩れて僕も前に倒れた。

 その間に僕の背中が踏まれてどんどん先へと仲間が爪を振るっていく。

 必死に堪えている間に、僕の目の前に血が沢山流れてくる。人の悲鳴の方がとても多かった。

 ここは何とか切り抜けられるか?

 ズドンッ!!!!

 ……そんな甘い事はなかった。

 プロテクターごと貫ける銃は、やっぱり複数ある。それがある限り、僕達は簡単に死ぬ。

 どうにか起き上がれた時には、仲間の死体と、それ以上の数の敵の死体がとても沢山転がっていた。

 皆はすぐ先でまだまだ戦っていた。

 僕の他にも、踏まれ続けて、やっと起きられたのが数匹居た。

 新参も踏まれていたけれど、そっちはプロテクターを着込んでなかったせいでもう既に息絶え絶えだった。骨も至る所が折れてしまっていて、口から血を吐き出している。

 起き上がる事も出来ない。死にたくないと懇願の目で見てきた。

「……」

 一匹が死角からさっと首を切って楽にしてやった。

 そして、もう一匹が爆弾を手に取って、激しい闘争の余り誰も気付いていなかった近くにあった扉の前に転がして、死体で壁を作り。

 爆発音、扉と死体が吹き飛ばされた。

 二つ目の道。中は階段室。

 そこへと進むべきか、一瞬悩んだけれど、一匹が一気に登り始めるのを見てそれに従う事にした。

 後ろから、気付いた仲間達も雪崩れ込んできた。

 

 階段室は上へ、上へと続いている。二回折り返す度に扉がある。

 どこで出るべきなのか分からなかった。

 でも、すぐ上には敵が潜んでいる可能性が高い。

 そうだ、自分達は壁を這う事も出来るのだから、上に行けばいい。そこから外に出れれば、どうとでもなる、はずだ!

 それを先頭の仲間も分かってか一気に一番上まで登っていく。

 ……何か、もしかしたら、いや?

 違和感。

 そうしてはいけないというような、どこかから感じる不安。

 No.27なら見逃さないような、確実なそれ。

「ハンター達! お前等はもう自由だ! 好きにしろ!」

 いきなり隅のスピーカーから大音量が飛んできて体が強張った。

 皆もそうだったが、それを聞いた瞬間、歓声が一気に階段室に響き渡り、活気付いて更に足早になる。

 でも、でも、ああ、そうだ。

 違和感。

 そうだ、人は……声を遠くに届ける事が出来る。

 人は……車で何よりも速く走る事が出来る。

 人は……ヘリコプターとやらで空を飛ぶ事が出来る。

 人は……僕達の想像なんて軽く超えてくる。

 敵は、多い。

 敵は、この組織が敗北を悟る程の数。組織の人が僕達を自由にするという判断をする程の脅威。

 一番上は、地上の次に危険な気がした。

 足が止まる。

 目の前にはこの階段室から出る扉があった。一番上まではまだまだ何階もある、途中の階の扉。

 少なくともそれは、安全なはずだ。

 あのNo.27だってきっと、そうするはずだ。きっと。

 その扉の前で、ハンドルに手を掛けて、でも、開くのがとても怖い。もしかしたら、敵は上も制圧しているのかもしれない。僕達が出てくるのを待ち構えているのかもしれない。

 分からない事だらけだ。分からない事だらけだ。分からない事だらけだ! 分からない事だらけだ!!

 でも、でも、僕は選ばなければいけない。生きたいならば。生きて最小ナンバー達みたいに自由を獲得したいならば!

 何もしてないのに呼吸が激しくなる。後ろで、そんな僕のしようとしている判断に足を止める仲間もちらほらといる。

 一番上まで駆け抜けていく仲間も……上からの足音が止まった。

 だからと言って、扉を開くような音もしない、と思えば一気に下へと降りてくるような、違う足音が聞こえ始めて、混乱と共に駄目だ! と言うような咆哮が聞こえて。

 ……もう迷っている暇はなかった。一番上が危険なのは示されている!

 僕の直感は正しかった!

 なら…………なら!!

 扉を開けて、一気に飛び込む。周りには、人、人、人。でも、それは敵じゃなかった。

 統一されたような服を着ていない。好き勝手な服と、心許ない、僕達のプロテクターを破れるものなんて一つもない武器ばかり。

 組織の人達だった。

「た、助かった、お前達、ここで籠城戦をするぞ」

 その言葉と同時に、窓から敵がガラスを破って一気に突入してきた。

「手を上げろ……クソッ、ハンターだっ!」

 数は多くない。

 外がすぐそこにある。でも、敵は上からも下からも攻め込んできている。

 逃げるのを優先すべきか、戦うべきか。

 悩んでいる暇はなかった。でも、決められもしなかった。分からなかった。でも、何もしない事は一番駄目な気がした。だから、戦う事にした。ここに降りてきた敵は、少なくとも強そうな銃を持っていなかったのもあった。

 一番近くに居た敵に迫る。机や柱を巧みに使って距離を取られて、弱い銃でも的確に顔を狙われる。でも、その隙に組織の人達が加勢して数人が倒れた。

 その間に他の仲間達がこの階層に雪崩込み、敵は瞬く間に追い詰められていく。仲間の数匹が窓から這って逃げようとし、激しい銃撃に遭って悲鳴と共に大半が落とされていった。

 ……あ、え、あ…………。

 外も、敵が一杯だ。出た瞬間に撃たれまくる。じゃあ、結局、逃げ場なんて、無いの?

 僕達、全員ここで死ぬしかないの?

 首輪からも解放されたのに?

 他の仲間達も絶望するように、動きが止まった。

 そんな中、組織の一人が追い打ちをするように叫んだ。

「俺達に逃げ場なんて無えんだよ! だからお前等も死ぬまで戦え!!」

 そうして拘束した敵を、どうしてか組織の人達は気絶させるだけで、殺さずに縛り付けていた。

 何でそんな事を? 疑問に思うと、一人が答えた。

「こいつらを盾にするんだ。そうすれば、あいつらは撃ち辛くなる。そん位分かれ馬鹿共!」

 …………。

 人は、聡い。

 人は、僕達よりも残酷だ。

 人の真似事も、僕達にはきっと出来ないだろう。

 でも。

 それを利用する事だけなら出来る。

 僕は、その敵を掴んで、背負った。

「お、おい?」

 そして外へと飛び出した。

「貴様ァ!! おいっ、お前等……あいつ、を…………はは……」

 中から同じ事をしようと、邪魔な組織の人間達ばかりが切り刻まれていく音が聞こえる。

 逆に、銃撃は飛んでこなかった。

 その音ばかりが、聞こえてきていた。

 

*

 

 視界の通らない場所へと逃げた。

 周りは人間ばかりで、本当に人間ばかりで、でも、僕に銃を向けてくる人間は殆ど居なかった。居たとしても、周りの人間を気にして撃てなかった。

 同じ服を着ている敵が見当たらなくなってから、高くに登る。

 日が沈んでいく方向、遠くまで続く建物の先には、森があった。

 もう暗くなり始めて、明かりが目立つ方向には、地平線の先まで建物が疎らに続いていた。

 どこに逃げるべきか?

 同じように逃げた仲間達も、もう散り散りだった。ここには僕しか居なかった。

 僕はこれから先全ての判断を、僕だけで決めて、僕が一番最初に動かなきゃいけなかった。

 誰かを頼りにも、犠牲にもする事ももう出来なかった。

 悩んでいる時間もなかった。

 考えている時間もなかった。

 このまま敵を背負い続けているのも、体力が不安になる頃だった。息で視界がもう白くなってばかりだった。

「う、うぅ……?」

 ああ、起きてしまった。もうそろそろ捨てるしかない!

 えっと? えっと?? ああ、そうだ!

 森の中に逃げた方が人が居ない。安心出来る……けど、いや、いや! いやいやいやいや、そうか! 人が居ないって事は、銃が使えるって事だ。人が居るって事は、そうだ! 銃が使えない!!

 そうだ、森の中は人が居ない! 銃が使えるんだ!

 味方は居ない。

 それはもう、どこでも一緒なんだから。

 森の中は邪魔者が居ない。僕にとっても、敵にとっても。

 街の中は邪魔者ばかり。僕にとっても、敵にとっても。

 そして、どっちが生き残れるかと考えると。

 それは、僕の背負ってきたこの敵が、僕を生かしてくれた事から、もう明らかだった。

「俺、どうなって……、は!? えっ!?」

 これまで僕を生かしてくれて、ありがとうね。じゃあ、さようなら。

「ひっ」

 ざくっ。

 

*

 

 腹が減ったから、走りながら、良い匂いがするものを人間から奪い取って口に入れた。

 口が痺れて吐き出したけど、後から美味しさが溢れてきてとても後悔した。

 次に口に入れたものは、人がくれる甘い水よりもとても甘くて、とてもとても美味しかった。

 甘い色のついた水を奪って飲んだ。人がくれる透明な甘い水よりも甘くなかったけど、それと比べものにならないくらいに美味しくて、どれだけでも飲んでいたかった。

 ベタベタな手でマスクを付け直したら、視界がベタベタになってとても見辛くなった。

 とても後悔した。

 

 ぽつぽつとした明かりの中、走り続けた。時々曲がって、狭い路地や壁を登って追いかけづらいようにして。

 人も少なくなっていく。雑然としていく。明かりが少なくなっていく。緑が増えていく。

 時折、建物に登って先を確認するけれど、それも段々と役に立たなくなっていく。

 今日は月明かりも殆どなかった。

 でも、ここまで走っても、僕には走り続けるしかなかった。

 人には沢山見られ続けている。敵は多い。足がパンパンになっても、少しでも遠くに、目立たない場所に逃げるべきだった。

 ……あれ、それって、結局、最初から森の中に逃げれば良かった?

 いやいや、敵がすぐ近くから迫ってきている状態で森に逃げたとしても、容赦無く撃たれそうだったから。

 うん、きっと、僕の判断は間違ってない。きっと。No.27だってそうしたはずだから。

 

 気付いたら家すら少なくなっていた。人も完全に居なくなって、涼しげな風がさらさらと届いてくる。

 鬱蒼とした木が等間隔で並べられている場所をすり抜けて、すり抜けていく。

 確か……これはハタケとかというヤツだ。

 人が食べる植物を育てている場所だと聞いた事がある。

 隠れられる場所だけど、人が頻繁に来る場所でもあるという事。

 時々、唐突に道に出る。またハタケに潜り込む。同じような光景ばかりが続いて、段々頭がおかしくなってくる。

 眠気が体を襲ってくる。

 いつものミッションのように何の心の準備も出来ないままに殺し合いをして、生きるか死ぬかの選択を繰り返して、そして走り続けているから、当たり前なのだろうけれど。

 こんな場所だ、寝ても大丈夫じゃないかな? と思ったりしてしまう。

 でも、ちゃんと、朝を迎えたい。これから先、好きな場所で寝て、起きて、好きなものを食べて、何も気にせず、人間の居ない場所で毎日を過ごす。そうして生きていきたい。

 No.27もそれを望んでいたんじゃないだろうか。何となくだけど。そして、もうそれを手に入れているんじゃないだろうか。きっと。

 いいなぁ。ずっと憧れてたんだ。

 皆、No.27とNo.1だったらNo.1の方に憧れている仲間の方が圧倒的に多かったけれど、もし、どっちになりたいかって聞かれたらNo.1になりたいって答える仲間が圧倒的だったけれど、でも、僕はNo.27になりたかった。

 それに従っていたら、安心だって思えるような存在になりたかった。

 別の組織に潜入した時、ガトリングガンの掃射を受けた時、No.27は目の前の仲間を盾にして切り抜けてもいたけれど。

 そういう冷徹な判断も出来る。最初は引いたけど、でもそんな判断が出来る事にも、どうしてだろう、気付いたら憧れになっていた。

 でも、僕はNo.27がいなくなった後も司令塔になる事はなかった。

 ……まあ、結局、僕にとってNo.27は憧れなだけで、それになれるとまでは思ってもいなかったし、頑張ってもいなかったけれど。No.27に従っていたら生き残れる、そうやって後ろを付いていただけだから。

 でも、僕は今、こうして生き延びている。

 だから…………前よりかは少しは近付いたって思っても良いんじゃないかなあ?

 ……ヴルルルルッ!

 車の音!?

 ヴルルルル……。

 …………過ぎていった。

 敵は、僕を見失っているようだった。

 一気に元気が湧いてきた。

 

*

 

*

 

 好きなものを食べる。

 森の中には毒になるものもとても沢山あるというから、最初は恐る恐るで腹を空かせる事も多かったけれど、他の生き物が何を食べているのかを見ている内に、そんなに困る事もなくなってきた。

 でも……少しだけ、逃げる最中に食べたものが恋しくなる。

 行かないけど。

 

 木の上で眠る。最初こそは寝ている内に落ちる事もあったけれど、今となってはもう慣れたものだった。

 快適さで言えば、檻の中で、いつだろうとも同じ空気が提供されていた時の方が良かったとも思うけれど。

 無機質な地面と檻の外の光景といういつもと変わらない光景ではない、僕自身が決めた場所で、色んな音を聞きながら、キラキラな空を眺めながら寝るのは、その快適さ以上に楽しかった。

 

 太陽の光を浴びる事が日課になった。

 周りに人間が居ない事を入念に確認してから、プロテクターも外して、ただただぼうっとする。

 眩しくて、浴び続けていると体が焼けていくような感覚もあるけれど、こうして陽の下で何も考えない時間がある事自体が、今まで檻の中でばかり生きてきた僕にとってはとても幸せだった。

 

 時折辺りを確認しながらも、好きに歩いて、好きに休む。

 人にさえ遭わなければ、他に気にする事もなかった。プロテクターも息苦しくて、頭だけはもう大体脱いで動いていた。

 出来れば、No.27に会いたかった。きっと、脱走した他の古参達と楽しくやっているのに、僕も混じりたかった。

 少しだけ、孤独はやっぱり、寂しかったから。

 それは、好きにしている時間が長くなっていくに連れて、強くなっているような気がしたから。

 

 ある日、ぽろりと首輪が二つに割れて落ちた。

 見てみれば、ネジが錆びてボロボロになっていた。

 凄い解放感だった。

 思いっきり投げて木にぶつけると、派手な音と共に爆発した。

 一気に逃げた。

 

 川に出た。

 一匹の、プロテクターも首輪も付けていないハンターが居て、川辺でしゃがんでいた。

 遠目だと誰だか分からないけれど、ワニが蔓延る川にそうして居るのは、明らかに古参のように思えた。

 それに一匹のワニがそれを喰らおうと飛び出してきて、逆に軽く捕まえると、森へと引きずっていく。

 思わず追いかけていくと、瑞々しい、叩きつける音が聞こえてきた。

 ……この音、聞いた事があるような。

 というか、うん、聞いた事がある。

 いや、えっと、あの……僕が会いたかったのはNo.27なんだけど。

 そういう事をやっていたハンターは一匹だけ。

 うん……何でNo.27じゃなくて、No.13に会うんだろう。

 足取りが重くなる。視界に、そのワニに抱きついて腰を振っているNo.13が見えてくる。

 捕まったって聞かされてたけど、何でこんなところでこんな事をしているんだろう。

 ミッションに駆り出されて、いつ死ぬかも分からない状況を一番楽しんでいたのは紛れもなくNo.13だけど、ああなりたいって思う仲間は一匹たりとも居なかったとも思うんだけど。

 何でそんなNo.13に会うんだろう。

 ……本当に、本当に、世の中は、分からないなあ。




No.128

古参寄りの中堅。
14. 殲滅ミッション 2 で、No.27が味方を殺してガトリングガンの盾にして切り抜けたのを見てた奴。
No.27に憧れていて、知性も結構高め。No.27達が逃走した後にミッションがあったら、サブ司令塔くらいはこなしていた。
攻め込んできたB.S.A.Aに対し、最終的にB.S.A.Aを盾にして脱出、その後人混みの中を駆け抜ける事で逃亡に成功。
その後、ワニのケツを犯していたNo.13と出会う。
性癖は至って普通でNo.7をオカズにしてたくらいだけど、実力差的に無理矢理犯されて目覚めさせられる可能性が濃厚。残念ですね。

バイオハザードの実写のリブート映画、1と2の欲張り合体セットにした結果、そもそもクリーチャー自体があんまり出てこなかった。
バイオハザードのネトフリのドラマ、ハンターが出たら見るとか思ってたら打ち切りになった。
バイオハザードのナンバリング、方向転換して0~6までのタイトルのようなクリーチャーはもうあんまり出なさそう。
ハンターαというクリーチャー、そんなこんなで、自分が推しているクリーチャーの中ではかなり新しい出番が薄い。
……まあ、0とかcode: veronicaとかのリメイクとかがありそうって考えたら、evolveのクリーチャーとかよりかは可能性あるけど。

挿絵モチーフ

  • No.1がスーパータイラントを首刈り
  • 岩山を登る最中、ふと振り返るNo.27
  • ショットガン持ちを背後から突き刺す
  • 背後から背中を貫くNo.10
  • 首を食い千切り心臓を抉るNo.1
  • 女を前後から犯すNo.13とNo.21
  • No.128を犯すNo.13

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